目撃者

図工室の前に、知らない人が立っていました。

誰かのお母さんなのだと思います。

用事があって、図工室の前で待っていたのでしょう。

 

廊下の棚には、生徒が作った作品が並んでいました。

そのお母さんはぼんやり棚を見て、ふと、わたしが作った猫の置物に目を留めると、

よしよしという感じで頭をなでてやりました。

 

わたしはそれを見て、あ、よかった、と思ったのでした。

 

面と向かって褒められたりけなされたりしたことよりも、こういう、「あ、よかった」や、

「あああ」な瞬間を、印象的深く覚えていることがあります。

 

図工室の、薄暗い、絵の具とボンドと木材がこもったようなにおいと一緒に思い出す、 

小学生の頃のはなしでした。