アノニマス

チェーン店の長いテーブルは窓に面していて、ちょうど

目線の高さにたくさんのドットが貼りついています。

 

このドットによって、外を歩く人にはわたしが誰だか

わからないし、わたしの方も、よほど近くに来ない限り、

窓の向こうの人の顔を見分けることができません。

 

信号が変わるたび、大きく動く知らない人の流れは、

水族館の魚の群れを見るようできれいです。

ひとりでぼんやりするには良い環境かもしれません。

 

だけど、帰り道に名前を呼ばれ、振り向いたときに

知っている顔が見えたら、やっぱりほっとするのでした。