カット野菜

ひとり暮らしを始めた友人の家へ遊びに行くと、ある有名な料理家の

レシピ本が置いてありました。

 

その本、とてもいいよ。

手軽においしい料理が作れるだけじゃなくて、書いてある中に

共感できることがたくさんあるの。

例えば、カット野菜じゃなくて、丸い状態で野菜を買おう、とかね。

料理から自分の生活を見直すきっかけになるよね。

 

そう言いながら彼女はエコバッグから何かを取り出しました。

それは、ビニールパックに入ったサラダ用のカットレタスでした。。

「まあ、買っちゃうけどね」

 

彼女を見ていて、わたしは「るきさん」(高野文子著 筑摩書房、1996年)

を思い出します。

るきさんは都内でひとり暮らしをしていて、その暮らしぶりは決して

おしゃれとか、優雅とかいうわけではないのに、どこか達人の風格が

あります。

それは、るきさんが自分の中に指針を持っている人だからです。

 

友人の彼女は、レシピ本の内容を決して鵜呑みにはしていません。

かといって否定しているわけでも、どうせ無理と卑屈になっている

わけでもありません。

自分のできる範囲で、適当にカスタムしながら実践しています。

るきさんと同じく、彼女は彼女の指針を持っているのだと思います。

 

物語の最後でるきさんはある決断をするけれど、どこへ行っても

るきさんはるきさんだなあと、納得します。

前回紹介した「からくりからくさ」と趣が異なるけれど、こちらも

好きな本なのでした。