高校生の頃、部活のオーケストラでビオラを弾いていました。
ビオラはバイオリンより一まわり大きい弦楽器で、同じく弓を使って演奏します。
楽器未経験で入部したわたしがまず覚えなければならなかったのが、
右手の弓の持ち方でした。
バイオリンやビオラを弾く人を観察すると、弓を持つ指は
軽く丸みを帯びていて、てのひらには適度な空間があるのが
わかります。
様々な分野に共通のことですが、「正しい」構えとは「力が入っていないこと」、
「楽な体勢であること」。弓の持ち方も同じことで、上手い人の手は良い意味で
脱力していて、絶妙なバランスを心得ています。
しかし、素人にはこれが難しい。
先輩の持ち方を見て真似するのですが、思うように弓を支えられません。
丸みを帯びるはずの指はなぜか伸びており、ついに小指の筋肉がつって
悲鳴をあげる始末。
なぜでしょうか。
答えは、ずばり筋力がないからです。
人間の体にはたくさんの筋肉がありますが、中にはほとんど使っていない
筋肉もあります。
弓を支えるのは、えんぴつを持ったりおはしを持ったりするのとは別の力が
必要で、普通に生活している限りはまず身につかない力なのです。
特に小指の筋肉は、弦楽器の弓を持つまでほとんど意識したことのない
場所でした。
楽であるはずの「正しい」構えは、そもそもの基礎体力が前提なのです。
道のりがそう平坦ではないことを、ビギナーたちは知りました。
そんなわたしたちも、小指を使ってシーソーのように弓の頭を上げ下げする
地味な筋トレを1ヶ月くらい続けた頃、ようやく弓を落とすことなく支えられる
ようになったのでした。
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