絵本といえばどこか牧歌的で、かわいらしいもの、優しいもの、
と思っているならば、それは違います!と声を大にして言いたい。
そういう絵本もありますが、そうでない絵本もあるのです。
「1999年6月29日」(作/デイヴィッド・ウィーズナー 訳/江國香織 BL出版、1993年)。
いかがでしょうか、この不穏なタイトル。
物語は1999年5月11日、ニュージャージー州ホーホーカスにて、ひとりの
小さな科学者が実験を行う場面から始まります。
以降、ため息が出るくらい精密な絵と、淡々と状況を説明する
簡潔な文章で、物語は進行していきます。
絵がリアルで隙がないほどに、文章が事務的で硬いほどに、話の
突飛さや奇抜さが突き抜けていくようです。
例えばすごく真面目で厳粛な雰囲気の時ほど、なぜかおかしくて笑いが
堪えきれなくなるのと似ているかもしれません。
この手法は、卓越した絵画技術と物語の構成力があってこそのもの。
なかなか真似できるものではないけれど、格好良くて憧れてしまいます。
1999年6月29日に、いったい何が起こったのか?
お確かめください。