ずっと読んでみたいと思っていた本。
「たんぽぽのお酒」(レイ・ブラッドベリ作 北山克彦訳 晶文社、1997年)
多分原文は装飾的な美しい文章なんだろうけれど、忠実に日本語にすると
ちょっとわかりにくい。。。という「翻訳あるある」を感じます。
でも、全ページから溢れんばかりに放たれる特別強烈な夏の「光」の粒、
その熱量は圧倒的です。
少年時代の、ひと夏の思い出。
さぞ楽しくって、きらきらとしているのだろうなと思ったら、周りには
驚くほど死の影が伸びています。
その暗さがたんぽぽのお酒の輝きを余計に引き立てるのかもしれません。
幸福マシンを追い求める人、愛する街の雑踏を電話で聞きながら死んだ人。
50年近い時を超えて恋する二人。そして熱に浮かされ、生死をさまよう少年。
金色の光できらきらと照らし出される、古いフィルムを途切れ途切れに見る
ような本です。
あなたがたんぽぽのお酒が必要だと思うのは、どんな時ですか?
かなり肌寒くなってきましたが、過ぎた季節を思い出させてくれるすてきな
小説でした。