「絶望図書館」(頭木弘樹編 筑摩書房、2017年)。
とてもインパクトのある書名です。
副題は、”立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語”
とあります。
…特にその時、立ち直れそうもないほど打ちひしがれていたわけではないのですが、
タイトルに魅かれて手に取りました。
見れば表紙の写真も興味を引きます。
天井が抜け落ち、がれきの山になった図書館で、紳士たちが平然と書架を
眺めているのです。どういうこと?
作者もジャンルもバラバラな短編が収められているアンソロジーですが、
共通項は、ずばり「絶望」。
個人的に出色だったのが、李清俊「虫の話」です。
ある夫婦の、妻の方が主人公で、夫が語り手です。
物語は一人息子がある日誘拐されてしまうという、ショッキングな出来事から始まります。
主人公は、辛い状況の中でも物事を切り拓いていこうとする強い力を持っています。
どこかに向かっていこう、伸びていこうとする心のベクトルに支えられているわけですが、
それがある理由で跳ね返されてしまった時、彼女は一体どうなってしまうのでしょう。
そして、その理由というのは、何だったのでしょう?
読んでみて、すごく難しいテーマを扱っているのに、その簡潔さに驚いた作品です。
悲しいときに、悲しいお話で傷を癒す人がいれば、悲しいときは楽しいお話で
元気をもらう人もいると思います。
だから、一概にすべての人におすすめはできませんが、気になる方はぜひ読んでみてください。
いずれも魅力的な物語ですし、あ、自分と同じだ、と思うことが見つかるかもしれません。
最後に収められている、手塚治虫「ブラック・ジャック」より「ハッスルピノコ」は、
泣かせます。
アッチョンブリケ。