あこがれのまほうつかい

休み前の最後の日。学校から絵の具箱やら、習字道具やら、

朝顔の鉢やらをがたがたさせて一気に持って帰る子。

そして831日、手つかずの宿題の山に途方にくれ、

泣きながら家族に助けを求める子。

いかにも、ではありますが、小学校3年生当時のわたしにとって、

これほど身近で共感できるエピソードはなかったのです。

 

「ちびまる子ちゃん」はアニメでも見ていましたが、

単行本をまとめていただいてからは、何度も読み返すほどに

好きになりました。

 

思い返せば子供時代は些細なことでぱああっと明るくなったり、

「顔にタテ線」をいれてチャララーンとなったり、感情の浮き沈みが

大きく、毎日が目まぐるしいものでした。

まるちゃんの行動はそのままわたしの泣き笑いと重なり、ずいぶん

励まされたものだと思います。

 

さくらももこ先生に憧れ、画用紙やわら半紙にコマを割ってマンガを作って、

友達に見せていたこともあります。

当然わたしはももこ先生にはなれなかったけれど、今でも好きなことの

原点は、あの頃読みふけったまるちゃんにあると言って過言では

ありません。

 

「憧れのまほうつかい」(さくらももこ 新潮社、2001年)は、ももこ先生が

少女時代に出会って影響を受けた絵本作家エロール・ル・カインにまつわる

エピソードや、旅についてのエッセイです。

ル・カインが亡くなったときについて、ももこ先生は「シャガールが死んだ時より

ショックだった」というように表現していました。

シャガールの死を知らないながらも、今ならその気持ちがわかるように思います。

ももこ先生こそ、わたしにとってのまほうつかいでした。

 

物語世界に入って、その中でのびのびと遊ばせてもらったあの頃を、

これからも忘れずにいたいと思います。