風がふいていた

近所の中華料理屋で「サンマーメン」という、あんかけそばのような

ラーメンを食べました。ちいさい兄弟がお父さんに叱られながらチャーハンを

つつくのを眺めながら、ふと考える。

 

「ぼくがラーメンたべてるとき」(長谷川義史 教育画劇、2007年)

 

この本はラーメンの絵本ではありません。

ラーメンを食べるという日常の一コマをきっかけに、見えない世界を

想像する絵本です。

ぼくがラーメンを食べていた、その瞬間。となりの家では、またそのとなりでは、

さらにさらに、そのとなりでは。。

 

物理的な距離が離れていくにつれ、同じ時間を、まったく違う形で

経験している人がいることに気づきます。

本を読んで、悲しい、辛い、と感じる人もいるかもしれません。

あるいは、自分はなんて恵まれた環境に生きているんだろう、と

感じる人も。

人それぞれ、様々な捉え方ができる本だと思います。

 

わたしが考えたのは、となりのとなりの、ずっと離れたとなりに

住むその子に、いつかわたしは会うことがあるのだろうか、ということでした。

異なる時間を過ごしてきた者同士が、同じ空間で出会った時、いったい

どんなことを話したり、共有したりできるんだろう。

 

また、今までに知り合った人が、自分と出会う前にどんな経験を

してきたのか、ということも気になります。

わたしがいつかラーメンを食べていたとき、その人は別の場所で別のことを

していて、でも同じ風が吹くのを体に感じていたかもしれない。

そして今後、おいしいサンマーメンでも一緒に食べに行くことがあるならば、

それはなんとも不思議なことではないか、と思うのです。

 

自分以外の人の人生を経験することはできないけれど、

想像することはある程度可能です。

物語は、想像するきっかけを与えてくれます。

 

読み終わって本を閉じたあと、ぜひ裏表紙まで見ていただきたい絵本です。