ユージさん

ラーメン屋さんで、ユージさんはひとり。

店のおばさんが通りかかるをつかまえては、何かしゃべっていました。

ひざに穴の空いたズボンをはいて、酔っ払っているのか時々

うめき声のようなものをあげるから、とりあえずとても目立つのです。

 

座敷の上でごろんと横になり、足を投げ出すので、おばさんはとうとう

怒りだした。

「ユーちゃん!お店でそういうことされると困るのよ、言いつけるよ!」

言うことを聞かないので、もう知らないよ、とおばさんはぴしゃりと

言い捨てて行ってしまいました。

 

すると別のおばさんが、今度は本当にユージさんの破れたひざをぴしゃりと

叩いて、

「ねえ困る。本当に困ります」と深刻そうな顔をして懇願するように言って

いました。

それでも聞かない。このあたりから、なんだか笑いそうになってきた。

 

わたしたちが帰ろうとする通り道をふさいでいたから、おばさんはユージさんの

足を折り曲げてどけてくれました。

 

 

ユージさんがこのあと、どうしたかは知らないけれど。

 

モヤシがてんこ盛りのレバニラ炒めの湯気に包まれた、ある夜の思い出です。