やわらかな矜持

ひと月を、白く四角く積み上がった豆腐に例えたのは

向田邦子さんです。

 

 

子供の時分、豆腐は苦手であった。

おみおつけの実や鍋ものに、よく食卓にのぼったが、こんなもの、

どこがおいしいのかと思っていた。

色もない、歯ごたえもない、自分の味もない。

中略

若気の至りで色がないと思っていたが、豆腐には色がある。形も

味も匂いもあるのである。

崩れそうで崩れない、やわらかな矜持がある。味噌にも醤油にも、

油にも馴染む器量の大きさがあったのである。

 「豆腐」(「霊長類ヒト科動物図鑑」より 向田邦子 文春文庫)

 

 

日々が単調なあまり、その味わい方を忘れてしまうことが

あります。

本当は自分次第で様々な味や、香りや、色を与えることだってできるのに、

その手間も怠ってしまうことがあります。

しかし外を歩いていて何気なく聞こえた会話や、風景や、出来事から、

豆腐、もといわたしたちの毎日というのは、案外強靭で味わい

深いものだと、気づかされることもあるのです。

 

嬉しい日も、楽しい日も、悲しい日も。

日常に倦むことがあっても、工夫してこしらえたりしながら、おもしろがって

生きていきたいな。

昔ながらの豆腐屋さんの、水に沈むやわらかいかたまりを思い浮かべながら、

そんなことを思いました。

 

先週はブログをおやすみしてしまいました。

記事のストックを作って管理するべきだよなあ、と反省しております。

師走。せわしない時期ですが、無事に乗り越えていけますように。