わたしの通った高校は広い緑地に隣接していて、しかし在学中に訪れたのは、
アルバムのクラス写真を撮るための一回きりでした。
同級生数人と次に訪れたのは卒業式も済んだ後、3月の最後で、
花見客の姿がそこここに散らばる午後だったのを思い出します。
陽が傾き、桜も人も赤っぽく染まっていくのを、芝生の上でぼんやり眺めました。
かつて部活の顧問の先生が離任されるとき、あいさつで言っていた言葉がよみがえります。
人生は一期一会なのです。
今という時間を大切にしてください。
何年か経って、また同じ人たちが集まっても、もう二度と同じ時は
戻ってこないのですから。
あの時すべてを理解していたわけではないけれど、自分たちが人生の中で
短く濃い時間を過ごしたことはわかっていました。
終わってしまうひとときへの名残惜しさと、これから始まる新しい時代への不安。
毎年ソメイヨシノの花の頃になると、緑地の芝生で抱いた、
宙ぶらりんで所在ない気持ちを思い出します。
あの時の同級生たちとは、その後いちども会っていません。